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北海道で自分らしく生きる。「酪農アーティスト」とは?

北海道十勝の大樹(たいき)町では移住してきた若手芸術家を支援する「酪農アーティスト」という取り組みを行っています。そんなこの町のユニークな取り組みを活用し、北海道ならではの豊かなライフスタイルを実践しているアーティストの一人、木版画家の下山明花(しもやまあすか)さんにお話を伺いました。

酪農×アーティストという新しいかたち

酪農王国・北海道十勝の大樹町が地方創生事業の一環として取り組んでいる「若手芸術家地域担い手育成事業」。

若手芸術家を招き入れるための取り組みで、酪農家での搾乳作業などの体験や町内の見学などができるモニターツアーを実施し、移住を決めた人には、芸術家としてのキャリアを生かせるように、制作活動の拠点となるアトリエを提供。
さらには酪農場の従業員などとして地域産業に携わってもらい、生活資金を稼ぐため地域産業の仕事を斡旋して、創作活動を継続していける環境を提供しています。

2016年に始まったこの取り組みは担い手を確保したい酪農に限った事業でしたが、現在は農林業全般や商工業にまで対象を拡大しています。

「酪農アーティスト」としての可能性

その取り組みを利用している酪農アーティストの一人が、3年ほど前に山形県の美術大学を卒業し、大樹町に移住した木版画家の下山明花(しもやまあすか)さんです。現在は地元の家族経営の酪農場で朝と夕の搾乳作業を中心に従業員として働きながら、昼間などの空いた時間で創作活動をしています。下山さんのような、まさに「芸術家の卵」ともいえる若手芸術家にとって、創作活動には資金面だけではなく、時間と場所の確保が不可欠。でも、それらを確保できずに志半ばで諦めてしまうケースがほとんどなのだそう。そんな中、酪農の仕事に携わりながら創作をする「酪農アーティスト」としての活動は基幹産業の酪農の担い手を確保したい町と若手芸術家の双方のニーズにマッチした取り組みであり、移住促進にもつながって、町と若い人材に新たな可能性を広げてくれます。

実際のライフスタイルとは

下山さんの一日は酪農家の従業員として、早朝5時半の搾乳から始まります。仕事は朝晩の搾乳作業がメインで、毎朝5時半から9時半と、夕方の16時40分から20時半頃まで、約80〜90頭の乳牛を絞る家族経営の酪農場で働いています。

今のライフスタイルについて、酪農とアーティストの兼業には心のゆとりが生まれるという下山さん。木版画制作だけではワンパターンになりがちな生活も、酪農の仕事では可愛い牛たちに癒され、頭を切り替えることができてリラックスタイムになっているそうです。

移住して実際のところは…?

美大で版画を学んでいた頃、卒業後も版画をメインに創作活動ができる方法がないかと考えていた下山さん。

「大学まで絵を描くこと以外してこなかったので、最初はどこかに就職して会社員になってお金を稼ぐために働くということにちょっとした違和感がありました(笑)。とはいえ、結局は誰もが就職して社会で働くことは初めてのことだし、だったら大樹町に移住して酪農家で働くことも同じことだと思ったんです。大学卒業後はシェアアトリエを借りることもできますが、創作活動の場所を確保したり、仕事と両立したりするのも難しいのが現状だと思います。

大樹町のこの取り組みは就職先もあり、住むところもあり、アトリエもあるという、すべて揃った環境が魅力でした。それなら続けていけると思い、自分の好きな版画を続けていくことを優先して酪農アーティストの道を選び、大樹町に移住して今は良かったと思います」と下山さんは話します。

次回は引き続き、版画家の下山明花さんに酪農アーティストとしてのライフスタイルや制作現場、ものづくりに対する思いなどについて詳しくお話を伺います。
writer / 渡邊 孝明 photo / 下山明花、渡邊孝明

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