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「日馬富士問題」に見る危機管理のツボ

画像:足成

“危機管理”に最も大切なものは何か?

それは起きたことに対応する“スピード”すなわち“迅速さ”である。

これがあってこそ、事態打開の次の一手が打てるからだ。

 

リスク管理に詳しい中島茂弁護士は著書『最強のリスク管理』(金融財政事情研究会刊)の中で

<情報伝達は迅速でなければならない>

<現場はリスク情報の吟味をせず、ためらわず上に上げるように徹底しておく必要がある>

と指摘している。

横綱・日馬富士の今回の暴行問題について、日本相撲協会の組織内コミュニケーションと危機管理対応には首を傾げざるをえない。

 

暴行問題が発覚して6日目の11月19日、日本相撲協会の危機管理委員会は、ようやく今回の“主役”横綱・日馬富士から直接、事情聴取を行なった。

“問題が発覚してから”6日目である。

しかし相撲協会が今回の事態を認知したのは、その2週間近く前のことであり、遅すぎるという指摘は免れない。

相撲協会は発覚当初「危機管理委員会を立ち上げて調査する。ただし九州場所が終わってから」と発表していた。そこに迅速さは欠片もなかった。

“本場所中だから”“警察の捜査を優先”という当初の姿勢も、結果として“本場所中”“警察の捜査中”にもかかわらず横綱の事情聴取に踏み切ったのだから方針変更を余儀なくされたのであろう。

同じ日に八角理事長は書面で“痛恨の極み”とのコメントを発表した。相撲界トップの正式コメントも問題発覚後、これも初めてである。

 

日馬富士問題は日一日と混迷を深めている。

その経過をあらためて俯瞰的に見直すと、この問題の様相も日々変化してきていることが分かる。力士同士の暴行騒動が、協会内の対立構図にまで発展してきている。

それは情報の過多と不足、この相反する2つが勝手に走り出していることによるものであり、危機管理に対するスピード不足に起因している。

「なぜ暴行事案が明らかになるまでこんなに時間がかかったのか?」

「なぜ大ケガをしたはずの貴ノ岩が翌日も巡業で土俵に立てたのか?」

「なぜ貴乃花親方は被害届を提出しながら相撲協会に報告しなかったのか?」

「なぜ宴に同席していた横綱・白鵬は時間が経ってから証言したのか?」

「なぜ二種類の診断書が存在するのか?」

……一連の「なぜ?」にキリがない。多すぎる。

警察の捜査について秘密保持は仕方なしとしても、この「なぜ?」が増えれば増えるほど、そしてひとつひとつに対する回答が遅れれば遅れるほど、ファンだけでなく世間の相撲界への不信は増していく。

警察ですら“配慮”しているほどの本場所、その大切な九州場所の土俵の熱戦すら“土俵外の問題”によって薄らいでいる。

 

相撲協会は警察の捜査優先と言うが、協会自らの調査は捜査とは違う。

あらためて言う。

協会が自ら積極的に調査し、判明したことだけでもその内容を速やかに発表するべきである。

当初注目されたビール瓶の存在はともかく、品格を求められる横綱が“殴った”ことを認めており、それだけでも大きな問題なのだから。

八角理事長はコメントの中で「関係者の聞き取りについても可能な範囲で進めていく」と語ったが、“可能な範囲”などではない。必要なことは“積極的に”である。真実はひとつ。この問題は警察の捜査が進む刑事事件であり、“角界の常識は世間の非常識”という言葉は通用しない。

特別な社会でのことではなく、私たちも一般的な感覚でとらえるべきだ。

 

“危機管理”の基本は「悲観的に準備して楽観的に対処する」と言われる。

起きた問題にはまずは大きく構えて取り組み、状況を見て対応を次第に解除していけば良い……という意味でもある。

四人の横綱を得て“満員御礼”が続く人気絶好調の相撲界。

悲観的になる気持ちも当然あるだろうが、“対処”を忘れてはいけない。

相撲協会の自主的そして積極的な調査に誰も“待った”はかけない。

危機管理に待ったなし!である。

【東西南北論説風(20)  by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

 

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※ 足成