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総選挙は誤算の「嵐」だった

画像:足成

実に不思議な総選挙だった。

10月22日に投開票が行われた第48回衆議院議員総選挙は、これまで経験したことがない様相を見せた。

キーワードをひとつ選ぶならば“誤算”。

それはマイナス面だけではなく、「思いもかけないことが起きる」という意味を含めてである。

“誤算”をキーワードに振り返ってみた。

 

9月1日に行われた民進党代表選、それを経て安倍晋三首相は臨時国会での衆議院解散を決意する。

解散を表明する日、記者会見の3時間ほど前に、小池百合子東京都知事が新党『希望の党』の立ち上げと自らの代表就任を発表した。

会見の前にまず上野動物園のパンダの赤ちゃん名前発表に続けて……という周到に舞台を整えた上での発表だった。

すでに小池新党の準備は進んでいたが、まさか総理記者会見の直前にそんな動きが来るとは……。

首相にとって最初の“誤算”と見る。

 

9月28日の衆議院解散に合わせて、今度は民進党の前原誠司代表が、党の公認は出さず、全員で『希望の党』へ合流することを電撃的に発表。

自民党のある幹部によれば、党内には相当な衝撃が走ったと言う。就任したばかりの前原代表が、ここまで思い切って政権交代をめざす行動に出るとは……これも安倍首相と自民党の“誤算”と見られていた。

政局を取り巻くムードは一気に高揚感を増した。

 

しかし、小池代表の2つの言葉で、“誤算”のカードは自民から希望へと移った。

合流しようとした民進党議員について小池代表が語った言葉……「全員を受け入れる気はさらさらない」「排除します」。

この“排除”という言葉を聞いたとき、7月に行われた東京都議選の応援演説で、自分へのヤジを飛ばす一部聴衆に対して安倍首相が「こんな人たち」と言って批判を浴びたことを思い出した。

「さらさらない」「排除」この2つの言葉によって明らかに潮目は変わった。

希望の党へ合流できない民進党議員たちは、枝野幸男議員を代表とする立憲民主党を結党した。

さらに小池代表の側近・若狭勝氏が「政権をめざすのは次の次」的な発言をして、希望失速の一因にもなった。

 

攻守それぞれが“誤算”を繰り返した選挙前半戦は、まるで一手によって白黒が一気に逆転するオセロゲームを見ているようだった。

これまでも国政選挙を取材してきたが、大きな枠組がほぼ固まってから選挙戦がスタートしていた。

しかし、今回のように政策論争に至る前に、これほどめまぐるしく選挙の図式自体が変わるとは……これも“誤算”か。

 

選挙後半戦は、自民党が安定した支持を獲得した一方で、希望の党は首班指名を誰にするか示すこともなく支持を伸ばし切れない。

そんな中、いわゆる“排除された”側である立憲民主党の勢いは急加速する。

身を捨ててこそ浮かぶ瀬も有り、と言われるが、枝野代表にとっては、プラスの意味での“誤算”だったであろう。

しかし、投票の末、比例代表東海ブロックで5議席分の票を得たのだが、重複立候補者の内2人が小選挙区で当選したため、候補者の数が獲得議席に足りなくなり、立憲民主党の比例当選者は4人になった。

1議席分はルールで自民党に移った。

もう少し候補者を増やして擁立しておけば……。

これもここまで支持を集めて勝つと思わなかった立憲民主党の“誤算”。

 

今回の総選挙の“誤算”は当事者である党や候補たちだけではなかった。

各地の選挙管理委員会にもあった。

投開票日に超大型で非常に強い台風21号が日本列島に近づく予報となり、期日前投票をする人の数が激増した。

名古屋市内のある区役所でも投票に訪れた人が長蛇の列を作り、“1時間待ち”の状態があった。

期日前投票でこれほどの殺到はこれまで例がなかったとは思うが、投票部屋の廊下どころか建物にすら入りきれない有権者に対して「可能な方はもう一度出直して来て下さい」と職員が呼びかけていた。

投票所に来た人の中にはあきらめて帰ってしまい、結局は投票を断念した人もいたと聞く。過去最低の投票率だった前回に続き、今回も悪天候だったとはいえ投票率が53.68%と過去2番目の低さだっただけに、期日前投票所での飽和状態は残念な“誤算”だった。

 

“誤算”続きだった選挙の締めは本物の“嵐”、投票当日の台風襲来である。

投票所周辺の道路が冠水、停電で投票不可能、さらに離島の投票箱が回収できなくなるなど、かつて経験したことがない数々の事態によって、一部の開票作業が翌日に持ち越された。

すべての議席が確定したのは翌日月曜日の夕刻だった。

“誤算”続きの総選挙は最後まで計算通りにはいかなかった。

 

「一寸先は闇」とも言われてきた政治の世界。

総選挙が終わり、再び日本の政治が本格的に動き出す。消費増税、安全保障、改憲問題、原発など将来への重要テーマは多い。

ここでの“誤算”は決してなきように願うと共に、私たちはその行方をしっかりと見守る必要がある。

 

【東西南北論説風(15) by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

 

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※ 足成